古着バイヤーの眼になった。PICK UPPLEの身体になった。

古着バイヤーの眼になった。PICK UPPLEの身体になった。

東京、深夜2:00。

今回は都合上、初めてトランジットありでタイへ向かうことになった。

こういう時に限って、飛行機は遅れる。

乗り換えは香港。

空港内で電車に乗らなければいけなかったり、思っていたよりずっと複雑で、地味に時間を削られていく。

焦っている時の空港は、やたら広く感じる。案内板の文字も、足音も、全部少し遠い。

なんとかギリギリで手続きを済ませ、タイ行きの飛行機へ乗り込んだ。

行く前にある程度イメトレしておいて本当に良かった。

何も考えずに空っぽで行っていたら、多分間に合っていなかったと思う。

朝9:30。

なんやかんやあったけど、無事に現地へ到着。

チェックインまではまだ時間がある。

そのままタクシーに乗って、ホテルではなくマーケットへ向かった。

着いてすぐ、少し見て思った。

うん、今回なんか調子良さそう。

ラックの中で引っかかるものがある。

手に取る前から、なんとなく目が止まる。

この感じがある時は、だいたい悪くない。

好感触のまま、一旦ホテルへチェックイン。

いつもの方が迎えてくれた。

この瞬間だけ、少しだけ帰ってきた感じがする。

昼15:00。

シャワーを浴びて、少しだけ身体を休める。

でも気持ちはもう次に向いていて、そのまま夜の部へ。

やっぱり調子が良い。

その勢いのまま2日目に入ると、さらに感覚が研ぎ澄まされていった。

ラックの中から、自分たちの店にあるべきものが浮き上がって見える。

服の山なのに、全部が同じには見えない。

ちゃんと違和感が光っている。

今回の買い付け、かなりいけるかもしれない。

自然と期待値も上がっていった。

3日目になるまでは。

3日目の早朝。

やっぱり来たか、と思った。

前回も、その前もそうだったけど、買い付け中は体調を崩すことが多い。

もちろん何度も経験しているので、その都度反省して、今回は体調を守るためのアイテムも持ってきていた。

でも、敵わず。

喉終了のお知らせ。

そこから発熱。

外は37〜38度くらいの灼熱。

その中を、意識がぼんやりしたまま歩き続ける。

暑いのか、熱があるのか、もうよく分からない。

汗をかいているのに身体は重くて、目だけで服を追っているような感覚だった。

正直、そのあたりの記憶はあまりない。

買い付けていたはずなのに、ちゃんと覚えていない時間がある。

その状態が3日ほど続いた。

さらに追い打ちをかけるように、現地は旧正月。ソンクラーン。

前にも一度被ったことがあった。

その時はそこまで大きな影響がなかった印象だったので、今回も大丈夫だろうと思っていた。

でも、甘かった。

今回の買い付けで主力として考えていたスポットの半分以上が、ロングバケーションで閉まっていた。

おいおい。

体調はまだしも、これは非常にまずい。

正直、終わったかもと思った。

熱が出始めて、身体も削られているタイミングでそれを食らったので、かなりメンタルに来た。

残り2日。

現在の状況を、オーナーの榊くんに連絡した。

返ってきたのは、シンプルに「まあ、こればかりはどうしようもない。やれることやろう」という言葉だった。

その言葉で少し冷静になれた。

そうだ。

閉まっている場所のことを考えても仕方ない。

体調が悪かったことを悔やんでも仕方ない。

今ここで、残りの時間で、何ができるか。

基本に立ち返るしかなかった。

体調も少し戻ってきた残り2日間。

ネットで調べるだけではなく、実際に足を使って歩き、人に聞き、直接コミュニケーションを取った。

そうして新しいスポットを教えてもらった。

それが、結果的に当たりだった。

危なかった。

本当に危なかった。

でもやっぱり、足を使うって基本だけど大事なんだなと思った。

画面の中に答えがない時は、現地の空気の中に入っていくしかない。

汗をかいて、間違えて、聞いて、移動して、ようやく辿り着く場所がある。

しかも、紹介してもらって行ったお店の方が、日本にいる僕らPICK UPPLEにも深い繋がりのある友達の友達だと分かった。

そこで一気に距離が縮まった。

気づいたら意気投合して、乾杯していた。

タイにいるのに、日本の友達と遊んでいる時の感覚に近かった。

異国なのに、変に遠くない。服を通して、ちゃんと人と人が繋がっていく感じがあった。

良い時間だった。

そのお陰もあって、最後の2日間で怒涛の追い上げができた。

結果的に、買った数は前回よりは少なくなった。

でも、一点一点の強度やクオリティは、前回以上に良くなったと思う。

むしろ、量が取れなかったからこそ、より鋭く選ぶしかなかった。

体調も悪い。店も閉まっている。時間もない。

その状況で残ったものだけが、今回の買い付け分として日本に戻ってくる。

そう考えると、今回のラインナップには変な強さがある。

ただ順調に集まった服ではない。

削られた後に残った服たち、という感じがしている。

買い付けがすべて終わった後、このブログを書いている。

実はもう、次の買い付けのフライトを予約した。

すごく楽しみだ。

なぜなら、次も過去最高を更新できると思っているし、そうしたいと思っているから。

自分は小学1年から高校3年まで、サッカーを本気でやっていた。

続けていく中で、急に成長したような感覚を掴む瞬間が何度かあった。

ボールの見え方が変わる。

次に起きることが少し早く分かる。

今までできなかったことが、ある日突然、自分の中で繋がる。

それは大きな変化だったし、深い喜びだった。

サッカーを辞めて、ファッションの道に進んでから、正直そういう感覚を得た瞬間はなかったように思う。

ファッション以外でも、なかったかもしれない。

でも今、少しずつそれを掴み始めている。

服を見る目が変わってきている。

ただ良い服を探すだけじゃなくて、PICK UPPLEに必要な違和感や、まだ言葉になる前の気配を拾えるようになってきている。

10年以上経ったけど、今が一番楽しい。

今回の買い付けは、予定通りにはいかなかった。

体調も崩したし、行けなかった場所も多い。

でも、その中でしか拾えないものがあった。

そう思えるくらい、今回のラインナップには手応えがあります。
数ではなく、一点一点の強度で見せられる買い付けになりました。

写真や商品紹介だけでは伝わりきらない部分まで、
ぜひ店頭で直接見てほしいです。

PICK UPPLEでお待ちしてます。

 

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